会心の面を解く

原嶋茂樹

平成15年(2003)剣道八段審査
11月25日東京都・日本武道館。

剣先の張り合いから、「ここだ」の直感で跳んだ八段審査

平成15年11月の八段審査合格者が、全日本剣道連盟が発行する『剣窓』(平成16年1月号)に発表された。
記事とともに掲載された一枚の写真は、原嶋茂樹教士が二次審査で面を放った場面だった。

「写真の面は打突部位をとらえた場面ではなかったのですが、たまたま掲載されたこの写真を凄く気に入っているんです」

原嶋にとって八段受審はこの時が初めてだった。日本郵政グループに勤務。稽古量にも不足を感じ、「永遠の挑戦者となる最初の一歩」のつもりでの受審をした。


一次審査は慌てず攻め、相手が動いた瞬間に面を打つと、次には面に来る気配を察して胴。さらに再度面を打ち、続く二人目との立合でも存分に力を出し切った。
手応えもあり、一次審査を見事合格。
結果発表から二次審査まで4、5時間が空いた。

妙にそわそわとしたが、時間が迫ると原嶋は自分に暗示をかけた。

「これまで教わった国分寺剣友会の先生方を思いました。今、僕の両肩には葛城庸信先生、大久保久光先生、下木場等先生、中川俊次先生が乗っている。そして頭には玉利嘉章先生が乗ってくれている。先生方に教わったことをやり切るだけだ」

ゼッケン番号ABCDによる立合。Dの原嶋はまずCと立ち合ったが、相手は竹刀を張ってくるタイプではなかった。
27歳の時から5人の恩師の言に従い、剣先の練り合いに重きを置いてきた原嶋にとっては歯車の合わない立合となった。

つづく立合者Aは、しっかりと剣先で張り合うタイプ。原嶋は長い対峙の中、このまま一本も打たずに終えてもいいと覚悟し、Aの攻めにも乗らなかった。
と、Aの剣先がほんのわずかに動いた刹那、原嶋は「打とう」とする意識に至る前に、「ここだ」という直感だけで跳んでいた。手応えを感じる面だった。つづいて面に来た相手の竹刀をギリギリまで引きつけて返し胴を打ち、さらにもう一本面を放った。

二度とできないような立合の実現に、Aへの感謝が募った。
結果、このグループからは3名の八段が誕生。
原嶋教士のほかは、Bの草間益良夫教士とAの東良美教士だった。


原嶋茂樹
(はらしましげき)

昭和29年熊本生まれ。
熊本県立小国高校から下関市立大学に進み、卒業後、日本郵政グループ(当時は郵政省)に進む。
全国郵政武道大会個人優勝を経験。現在、日本郵政剣道部師範、国分寺剣友会師範等を務める。
教士八段

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