会心の面を解く

内田勝之

平成13年(2001)全日本学生剣道優勝大会
10月14日、東京・日本武道館。


大将、代表の2試合で奪った四本の面

佐藤成明教授が筑波大学を退官する年、
「優勝しよう」という意識が例年になく高く、チーム全体で根拠のない自信ができあがりつつあったという。

大会当日は4年生が大将に、3年生の内田は副将で序盤から戦っていたが、準決勝になると副将と大将が入れ替わった。そして迎えた日大との決勝戦、チームは1│2という劣勢で大将・内田に試合が回ってきた。内田には二本勝ちが課せられていた。

五将の亀井隼人がつばぜり合いからの離れぎわにひき面を決めて勝利を収める。
それを見ていた内田は「ああいう機会でも狙っていれば打てるのか」と感じていた。大将戦、亀井が打った技を記憶していた内田は、同じ機会でひき面を放ち、一本を奪う。

あと一本奪えば同点になるが、逆に一本でも取られてしまえば、そこで筑波大の負けが決まる。しかし、内田の気持ちに迷いはなかった。今度は、つばぜり合いから逆交差の状況になってからのひき面。自らが得意としているこの面で、ついに同点に持ち込んだのである(右下の写真)。

時は3年前のインターハイ準決勝にさかのぼる。
PL学園高校の内田は中堅で戦っていた。大将が敗れて同点に持ち込まれ、「だれが代表戦に出るのか」という空気になったとき、自分から名乗り出ることができなかった。結局先鋒の選手が出てチームは敗退。自分が何も言えずに敗れたことが心残りだった。
その思いを持ち続けていたこともあり、日大との代表戦ではすぐさま自らが出場することを志願した。

大将同士による再戦。流れは内田に傾いていた。やがて跳び込み面で一本を奪う。当時の代表戦は三本勝負。「仮に一本を取られてもまた一本を取ればいい」と、二本目開始以降も?攻撃のみ.だった。そして、相手の出ばなに面を打った。

「下がりながら相手の出ばなに打ったのですが、普段はそんな技はあまり使いません。相手の動きが見えていたのだと思います。このとき打った映像は、今もはっきりと自分の頭の中に残っているのですが、そういう試合はそれほど多くありません」

内田勝之
(うちだかつゆき)

昭和55年生まれ。
PL学園高校、筑波大学で学び、卒業後は磐田東中学・高校の教員となる。
全日本選手権出場、全国教職員大会優勝などの実績を持つ。
六段

TOPページへ
© SKI journal Publisher