会心の面を解く

高村泰央

平成24年(2012)
第54回関東実業団剣道大会
6月3日(日)、東京・日本武道館。
わずかな誤差を埋める秘策。ひらめきの片手面が一閃

大技の片手面を試合で見かけること自体が少ないが、それが大会の上位争いで、ましてや有効打突となったケースは極めて希まれと言えるだろう。

第54回関東実業団大会の準決勝、連覇を狙う三井住友海上(本店)とNTT東日本(東京)との中堅戦は、先鋒戦を三井住友海上が、次鋒戦をNTT東日本がともに一本勝ちで終え、同点同本数で迎えた戦いであった。

試合開始より得意の面技で国本隆寛(NTT東日本)を攻めた高村泰央(三井住友海上)。鋭い面打ちが何度か国本をとらえているようにも見えたが、国本もすんでのところで巧みに体をさばき、惜しくも有効打突とはならない。

当時の心境を高村はこう振り返る。

「国本選手とは過去に対戦経験があり、敗れたこともあります。その時の体験から、非常に技が多彩な選手で技の見切りにも長けた方だという印象がありました。

それだけにこの試合の時も面技を中心に攻めながら『あとほんの数?足りないな』という感覚があったんです。そこで考えたのは、もう数?間合に入って面を打つか、それとも何か違う方法を探すのか、ということでした」

高村が選択したのは後者だった。

「国本選手は出小手がとても上手というイメージがありましたから、間合をさらに詰めて面を打つのは危険だと感じました。出小手を打たれるリスクを回避するためには片手で面を伸ばしてみたらどうだろうということが瞬時にひらめいたんです」

高村の大技の一本勝ちで再びリードを奪った三井住友海上だが、その後の副将戦をNTT東日本に奪われるというスリリングな展開に。
最終的には大将の二本勝ちで粘るNTT東日本を振り切り、2年連続の決勝進出を果たすこととなる(決勝戦では東洋水産・本社に敗れて惜しくも2位となった)。

高村泰央
(たかむらやすお)

昭和56年生まれ。
栃木県・栃木南高校(現・栃木翔南高校)から早稲田大学へと進学。
大学卒業後、三井住友海上火災(株)に入社。主な戦績には、全日本選手権大会出場、全日本都道府県対抗大会優勝、全日本実業団大会優勝、関東実業団大会優勝などがある。
錬士六段

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