会心の面を解く

鈴木 剛

平成16年(2004)
全日本剣道選手
権大会
11月3日、東京・日本武道館。
この後場内がドッと沸き返った

この一本が、その後の剣道をも変えていった

小手を中心に攻め、相手が手元を上げなくなったところで突きに出る。突きで相手が表を意識したところでさらに小手、という攻め方。これこそが鈴木剛教士の持ち味であった。背丈もさほど高くないため、思い切って面に跳んでも懐の深い相手には通用しなかった、という。

平成16年の全日本選手権、準決勝までに鈴木が一本にしていたのは、小手三本と突き二本である。それだけに、原田悟(警視庁)との決勝戦、9分過ぎに決めた豪快な跳び込み面は、対戦相手だけでなく会場全体の度肝を抜いたのであろう。

「決勝戦になるともう自分の攻め方が見透かされていました。試合が長くなって体力的にも精神的にもきつくなっている。このまま手堅く戦い続けるよりは、もう打てる技を思い切って打ってみようという心境になっていました。このときの一本は?会心.という言葉しかあてはまりません」

最後に決めた面の打ち間は、普段であれば小手を打つ間合、と鈴木は振り返る。そこから竹刀をわずかにかつぎ、面に跳び込んだ。小手を打つ間合だったからこそ、相手も余すことができず、竹刀を開いて見入ったかたちになったのであろう。

けっして面技は得意というわけではなかった鈴木だが、大舞台で決めた一本が自身の剣道にも影響を与えていった。

「試合をしている瞬間はどう打ったのかは覚えていませんでしたが、『こういう攻め方からの面もあるのか』ということを体験して以降、だんだん面が決まることが多くなっていきまして。いまでは面のほうが多く有効打になっていると思います。以前は私の面に対して面に合わせられてしまうこともあったのですが、今ではそれが少なくなりました。運動量も落ちてきたので試合の組み立て方をより考えるようになってきたことも、面を合わせられなくなってきた理由のひとつかもしれません」

■鈴木 剛
(すずきつよし)
昭和47年生まれ。
安房高校、法政大学で学び、卒業後は千葉県警に。
現在は関東管区警察学校教官。
教士七段

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